対談
山行

MGL Talk vol.1

早いものでマウンテン グルメ ラボを発売してから約3ヶ月。リリースしてみてのお客さまの反応や今後の展望などなど。プロデューサーの三好とシェフ田嶋が、定例登山の合間に語り合ってみました。

 

 

三好:マウンテン グルメ ラボ販売からもう3ヶ月ですねえ。

 田嶋:反応は良いですね。美味いというのは絶対言ってくれます。

三好:嬉しかった声としてはどんなものが?

 田嶋:山じゃなくても食べたいとか、最初は高いと思ったけど、食べてみたら納得したとか。

三好:それはいろんな人が言ってくれましたね。

 田嶋:インパクトあったのは、試食しに来てくれたお客さんがグリーンカレーを食べた時の言葉です。「僕はカレー好きです。いままでいろんなカレーを食べてきましたけど、その中でもこのカレーは上位に入ります」って。

 三好:それはすごい褒め言葉ですね(笑)。

田嶋:思わず、ほんとですか? って言っちゃいました(笑)。

三好:でもカレーとしてもちょっと特殊ですもんね。汁無しグリーンカレー的な。他じゃたしかに食べられない。

 田嶋:一番人気はやっぱりグリーンカレーなんですか?

 三好:そうですね。でもシェリー煮込みも同じくらいですよ。

 田嶋:僕の中ではシェリー煮込みがシングルカット版なんですけど、アルバムの中の別の曲(グリーンカレー)がバズっちゃったみたいな感じで、嬉しいんですけど、ちょっと悔しい(笑)。

 三好:まあ、グリーンカレーって良し悪しが測りやすいですもんね。シェリー煮込みは食べたことない人が多いでしょうし、最初に手を出しにくいのかもしれませんね。もはやブルグルなんて、知っている人に殆ど当たったことがない(笑)。

 田嶋:ブルグルまでいっちゃうと、ナニコレ?って調べちゃうくらい変化球ですよね。やりすぎましたか(笑)?

 

三好:でも美味しくて山に合いさえすれば、ノンジャンルに世界中の素材を組み合わせて遊んでみるっていうのがMGLっぽくて、僕は大好きなレシピです。

まあ、今後はちょっと分かりやすいのも増やして行く必要はあるかもですね。それも田嶋さんが作ったら絶対に違った感じになると思いますが。

田嶋:同時に攻めたものも作るんですが、そのバランスですよね。

 三好:田嶋さん的に、今後のレシピの方向性はどういう感じですか?

 田嶋:どうしても山に持って行くご飯って、代用品みたいなイメージがありますよね。例えば、熱々の豚汁と白飯を食べたいなら下界で作って食べるのが一番です。でもそれができないからフリーズドライにした豚汁とアルファ米を持って行く。

 三好:そういう代用品、みたいなものは作りたくない?

 田嶋:そうですね。これが食べたい、というものにしたいんです。だから今まで作ってきたレシピも、クロスオーバー感を大事にしていて、他にはないものになっていると思います。

 三好:登山したときに、漠然とグリーンカレーが食べたい、じゃなくてMGLのグリーンカレーが食べたいというふうになってほしいってことですよね。

 田嶋:そういう料理を作るためには山に行き続ける必要を感じていますね。山に行くことでいろんなヒントを得られると思っています。

 三好:最近は、低山ですが冬山もいってますけど、そこでなにかヒントは得られました?

 田嶋:暖かいまま食べられるものが欲しいなと思いましたね。例えば鍋的なものとか。いままでのものは沸いたら放置するだけなので、ガスの消費量は抑えられていますが、それとは別にトロ火でグツグツさせながら食べられるようなものも良いですよね。

 三好:それ、すごく助かりますね。

 田嶋:あとは逆に、夏場だったら冷たくて美味しいもの。家で冷水と氷を入れて持って行くと山頂付近で出来上がっているような冷や汁的なものとか。

 三好:それだったらテント泊のときに夜に仕込んでおいて朝食べるなんてこともできますしね。

 田嶋:最初は軽くすることを最優先させていたので、レシピに制限がでていたんですが、山の経験値が増えていくことで、そこまでULじゃなくても大丈夫ということもわかってきました。だからもっと強弱を付けたものを作ったりしても良いかなと。

 三好:強弱というと?

 田嶋:例えば縦走のときに、初日に食べちゃうものはちょっと重たくても平気ですよね。レシピ的にもうちょっとだけ重量から解放されると、美味しさのほうにより振り切ることができると思うんです。

 

 

三好:田嶋さんみたいなシェフがガンガン山に登っているっていう話、聞いたことないですからね。どんどん誘うんで経験値さらに上げていきましょう。

田嶋:ヨーロッパのワイナリーのオーナーって山に登る人、多いんですよ。

三好:ワイン作りは自然との親和性高そうですもんね。田嶋さんをいろんな山に連れて行くのが楽しみになってきました。僕としては、そろそろ田嶋さんに和のものを作って欲しいなあとか思ったりしてます。本職ですからね。 

田嶋:さっきの話に戻っちゃうんですけど、代用品は作りたくないんですよね。となると本職なだけに、その線引きがものすごくシビアになってしまって……。ただ例えばなんですけど、小さいリキッドのようなものは考えていたりします。

 三好:リキッド?

田嶋:ドライしてなくって、小さなパケットに入った濃縮出汁だったり、ソースだったり。

三好:あー。たしかに フリーズドライ以外のものにも挑戦したいですよね。たとえばレトルトの具材を別売りしていくとかも。

 田嶋:軽くしたいから、小さいレトルトっていうのは可能性ありますよね。

三好:山でのレトルトの弱点って、湯煎する必要があることだと思うんですよね。水がもったいない。

田嶋:たしかに湯煎で使ったお湯で珈琲飲む?って言われてもちょっとイヤですね(笑)。ただ、小さいもので別添としてであれば、調理時に袋から出して一緒に温めてしまえもしくは温かい料理にそのままかけちゃうとか。混ざりきらないで、温度や味のむらが出てくることでアクセントも作れるかも。

三好:面白い。

 田嶋:山で焼ける全粒粉のチャパティとか粉ものも良いかもしれません。レトルトのカレーと一緒に食べられるような。それがあればクッカーを拭える食べ物ができるということですしね。

 

三好:あとは例えば、アルファ米とか棒ラーメン用のオリジナル具材みたいなものも挑戦したいですね。サイズ的にも小さくて、価格も抑えられているような。MGLの美味しさを体験してもらうための入口的な商品ですね。

田嶋:ぼく九州出身なんで、マルタイさんとはぜひコラボしたいです。すでに良い中華麺マルタイさんが作っているんで、そういったものまで自分たちで開発する必要はないと思うんですよね。

三好:あの麺は完成度高いですよね。ただ、いつも具で悩みます。乾燥野菜だとちょっと物足りない。 

田嶋:まあ、このへんは話しているとアイデア尽きないので(笑)、あらためて三好さん的には事業方面で仕掛けたいこととかはあるんですか?

三好:そんなに派手なことをするというよりも、ちゃんと良い物を作り続けて、ちゃんと美味しいと言ってもらえて、っていう基本的なところを一番大切にしていきたいです。
あとは「美味しいものを食べるために登る」。そういうカルチャーみたいなものをつくれないかなと思っています。山って本当に最高のレストランロケーションなんですよ。景色も、空気も最高。食べる人のコンディションも空腹感、高揚感、疲労感満点で最高。さらにたっぷり飲み食いしてもギルトフリー(笑)。これ以上食べる喜びを最大化してくれる場所はない。そこに最高にうまいものさえあれば、最高の食体験って山にこそあるんじゃないかって思っていて。それを発信もしていきたいし、同時に一緒に貪欲に食体験を追求する仲間もほしい。

だから、情報もドシドシ欲しい。サイトにタレコミってコーナーがあるんで、皆さんのとっておきの山グルメとか、最高のレストランロケーション(=山)とか、いろいろ教えて欲しいです。そうやって山グルメの輪、みたいなものが広がって行くとうれしいですね。→タレコミはこちらから

田嶋:山の世界ってギアの進歩は目まぐるしいですが、食という意味ではまだまだ追求できる余地が大きい印象です。山の食文化に料理人としての新しい目線をくわえることで、あっと驚くものを作っていきたいと思ってます。 

三好:4月くらいには新商品も3、4種くらい一気にリリースする予定です。セレクト商品の販売もスタートしましたし、そちらもどんどん拡充していきます。「せっかく山に行くんだから美味いモノが食べたい」となったら、とりあえずマウンテン グルメ ラボを覗いてみる。そういうブランドにしていきたいと思っています。

 

Text/Takashi Sakurai
Photo/Hinano Kimoto