天上のレストラン
山行

ボルケーノキーマが生まれた
安達太良山への再訪

今回マウンテン グルメ ラボ(MGL)一行が向かったのは、磐梯朝日国立公園の福島県域である「磐梯吾妻・猪苗代地域」。環境省が主催する日本の国立公園の観光に関わる事業者が集まる全国会議に参加しました。ここはボルケーノキーマが生まれたきっかけとなった場所であり、その機会をくれた、安達太良・吾妻 自然センター(ANC)の一瀬圭介さんのホームグラウンドでもあります。

安達太良・吾妻 自然センター代表の一瀬圭介さん。ボルケーノキーマを生むきっかけとなった人物。磐梯朝日国立公園の活火山をつなぐロングトレイル「磐梯・吾妻・安達太良ボルケーノトレイル®︎」のプロデューサーも務め、有名な山岳カメラマンでもある。



まず向かったのは、磐梯朝日国立公園の吾妻地域に位置する駱駝山。

先行する一瀬さんのペースがとにかく速い!
食いしん坊三好はもう息も絶え絶えです……。



駱駝山の頂上は、吾妻小富士の火口を上から望むことができる知る人ぞ知るスポット。

そこに至る道中には、さまざまな形をした五葉松があるんですが、厳しい風雪に耐えながら自生する吾妻五葉松の姿は、まさにアート。実はこの吾妻エリアは盆栽の聖地としても知られていて、現在、一瀬さんが観光関連の窓口も務める「ぼんさいや あべ」は、90年以上続く老舗盆栽園。吾妻山に自生する五葉松の姿を表現した「吾妻五葉松盆栽」は、日本のみならず海外からも高い評価を得ています。



紅葉に彩られた美しい道を上がっていくこと約40分。山頂からは吾妻小富士の火口を見下ろすことができます。良い感じのガスも出てきて、その火山性の地形と相まって、日本離れした風景です。


登山後は、場所を吾妻小富士の麓にある浄土平ビジターセンターに移し、ディナーをとりながら日本全国の国立公園に関わる観光事業者の発表が始まります。三好もちょっとだけ登壇して、MGLのご説明をさせていただきました。

このディナーを担当したのは、MGLでメニュー開発を担っているシェフ田嶋です。今回のMGL的主目的でもあります。

以下、メニューをズラリと並べてみますが、なんとも見映えのする料理の数々。そしてシェフ田嶋ならではの、意外性のある味や食感に、参加者の皆さんからも感嘆の声が上がっていました。

三五八漬け(蕪)/鰊の山椒漬け/いかにんじん

 

芋のテリーヌ(さつま芋・紫芋・里芋 地層仕立て)


烏賊人参のすり流し

 

馬肉 辛味噌と鰊の山椒漬けペースト添え 会津風 若桃と柿

 

朴葉蒸し(凍コンニャク・鰊山椒漬け・舞茸)

 

キャベツ餅の奉書巻き揚げ


蕎麦粉と地粉のショートパスタ


くろがね焼きのキャラメリゼ 松の実のペースト


今回のシェフ田嶋の料理は、地の物へのリスペクトが込められています。芋のテリーヌは三種の異なる芋を組み合わせることで、活火山の爆裂火口に見られる地層を表現。添えられたヒマラヤ岩塩を付けていただくと、ほんのり硫黄の香りがします。馬肉の盛り付けは、まるでマグマのようですし、地の物もふんだんに使っています。そして一瀬さんのホームでもある岳温泉で購入したくろがね焼きを見事にアレンジ。盆栽リスペクトも込めて松の実のペーストで仕上げるという凝りっぷりです。


そしてなんと言ってもお酒と合う! この日は一瀬さんがブランディングチームに属している郡山市の酒蔵「仁井田本家」の日本酒も振る舞われました。


先ほどのハードな登りで疲れた身体に染み渡る、食いしん坊三好いわく「最高のコンディションでいただくディナー」。素晴らしかったです!
シェフ田嶋は慣れない調理場&器不足などもあり、大忙しでそれどころではなかったようですが……。

 

各事業者さんたちの発表が終わったタイミングで、次の日のチーム分けです。翌日はA、B、Cの3チームに分かれて、それぞれ安達太良エリアを巡ります。

一瀬さん率いるAチームに参加したいけれど、今日のようなスパルタ登山の可能性もあるわけで……。

「登山好きなら、おすすめは絶対にAです」と一瀬さんが力強く宣言。食いしん坊三好、どうする?

「え、Aで……」

よく言った! ということで明日は早朝から山に行くことになったため、いつものような深酒は控えて、宿に戻ることにします。


翌日は朝5:30に集合して、塩沢登山口に向かいます。安達太良山を目指すなら、奧岳登山口がメジャーですが、今回のルートは塩沢登山口から入り、建て直し中のくろがね小屋を経由し、爆裂火口へ。その後鉄山に登ってから、安達太良山の山頂を踏み、ロープウェイを使って下りてくるというもの。この山域を満喫できる一瀬さんイチオシのコースです。

 

この渓谷沿いの道が、また素晴らしい。屏風岩から先は、右が切れ落ちているので注意が必要ですが、美しい滝も現れますし、いくつかの渡渉ポイントもアドベンチャー感があります。目線を上げればそこかしこに美しい紅葉も望めます。安達太良山というと荒涼とした火山地形が有名ですが、また違う側面を見せてもらいました。

そして、さすがに昨日のような爆速登山ではないようで、ひと安心。



渓谷を抜けると、現在建て直し中のくろがね小屋に到着します。もともと岳温泉はこの場所にあったという話や、湯守の話、地形の話など様々なことを一瀬さんが教えてくれます。ただの登山では味わえない贅沢な時間。ちなみにここには安達太良・吾妻 自然センターが管理・運営を行っている「携帯トイレブース」も設置されています。一瀬さんがそのブースをチェックすると、どうやら大量のゴミが捨てられていたそう。一瀬さんは毎週のようにゴミを運び出しているそうです。美しい安達太良を守るためにも、くれぐれもマナーを守って利用したいものです……。

そこから先はTHE 安達太良山。見晴らしのよい火山地形を歩いて行きます。上を見上げれば見事な青空。ガスと強風が特徴のひとつでもある安達太良山としては、かなり珍しいコンディションです。

そうしていよいよ今回の登山のハイライトである爆裂火口へ。

「どれだけ事前に写真を見ていてもびっくりしますよ」という一瀬さんの言葉通り、ものすごい迫力です。実はここがシェフ田嶋がボルケーノキーマのインスピレーションを受けた場所なんです。


見る角度によって、さまざまな表情を見せてくれる火口の脇を、舐めるように登って行って鉄山に。お待ちかねのマウンテングルメの時間です。

この日は時短のために、保温ボトルに事前にお湯を入れて持参したんですが、そのすべてを一瀬さんが背負ってくれました。参加人数は20人ほどだったので、総重量で言ったら余裕で10kgオーバー。ほんとうにありがとうございます……。


さて、そんなありがたいお湯を使って調理開始。といっても今回はアルミバッグバージョンなので、お湯を注いだら待つだけです。眼下に広がる爆裂火口を愛でていたらあっという間に出来上がり。これだけ大人数の人が一堂に会し、MGLを食べている図はなかなか壮観。最高のロケーションの中、参加者の皆さんからも「美味い!」「値段にも納得」など、嬉しい声をたくさんいただきました。この機会を与えてくれた一瀬さんに改めて感謝です。


そこからは、安達太良山の頂上である乳首(ちちくび)を経由してロープウェイの駅へと下山していきますが、いたるところに登山道を整備した後があります。これも一瀬さんの活動の一部。水の流れを正してあげることで、登山道(山体)崩壊を食い止め、植生の復活を目指していて、以前の写真と見比べてみると、驚くほど歩きやすくなっていることがわかりますし、登山道脇には新たな芽吹きも見て取れます。

この登山道整備は特に補助金などが出ているワケでは無く、「ボルケーノトレイル」という一瀬さんが繋いだロングトレイルの地図の売上げで賄っているそう。本当に頭が下がります。今度はぜひMGLとしても登山道整備に参加させていただきたい!


今回の磐梯朝日国立公園での滞在は非常に学びが多いものとなりました。とくに一瀬さんの博識っぷりとマルチプレイヤーっぷりには驚愕です。今回は一瀬さんが生んだロングトレイルである「ボルケーノトレイル」の一部を歩いたわけですが「いつかスルーで歩いてみたい」。そんな想いを強くした、素晴らしいトレイルでした。

 

Text & Photo by Takashi Sakurai

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