探訪

MGL探訪
#01 加藤兵太郎商店

 
食や山にまつわるさまざまな現場に足を運んで、もっと見識を広めたい! ということで「MGL探訪」と題して連載化予定の当企画。今回は豚汁ぶっかけ飯でコラボさせていただいた味噌メーカー「加藤兵太郎商店」さんに三好、田嶋のコンビでお邪魔してきました。

七代目の加藤 篤さんの案内で、味噌造りの作業場に足を踏み入れると、まるでお寺の鐘のように巨大な鍋が出迎えてくれます。これは大豆を蒸すための圧力鍋で、いっきに1320kgを蒸すことができるそうです。

 

 

加藤兵太郎商店さんの味噌造りの工程は、全体で20以上ありますが、なにより手間がかかるのが米麹作りだと言います。洗い、浸漬、水切り、米蒸し、冷却、種付け、製麹、塩切麹など、そこだけで8もの工程があります。

さらに平行して、さきほどの巨大鍋で大豆を蒸す作業などもあります。

米麹と大豆が出来上がってから、ようやく仕込み作業に入れるそうです。

 

 

その仕込みの現場にズラリと並ぶのが加藤兵太郎商店さんのこだわりであり、90年以上も受け継がれてきた木桶たちです。

上から覗くと、ぷくぷくと泡立っていて、麹が生きているのを実感できます。

 

「味噌造りは分からないことも多いんですよ。蔵によってぜんぜん味が違うということは、教科書から逸脱した作りをしているからだと思うんです。それがオリジナリティに繋がってくる。だからこの木桶にしても変えるということをしにくいんです。いろんな要素が複雑に絡まり合っていまの味になっているので、ひとつを変えてしまうと、どんなことが起こるのか想像できないんですよね」

 

工程のほとんどが手作業で進められるため、たくさんの手間がかかるだけでなく、材料であるお米を担ぎ上げたり、味噌が仕込まれた木桶を移動させるなど重労働もあります。
普段何気なく食べている味噌も、作る現場を見ることでありがたみが一層増すとともに、これを生み出した先人の知恵にも感服です。

 

すべての工程は、100年以上続く経験の蓄積による要素が大きいですが、七代目の加藤さんは、さまざまな新しい取り組みをおこなっている改革者でもあります。9月には味噌ラーメン屋さんもオープン予定だそうです。

たっぷり2時間ほど蔵見学をさせてもらった後は、味噌ジェラートをいただきながら3人で味噌談義。加藤兵太郎商店さんと、八ヶ岳のジェラートブランド、イエティさんのコラボで生まれた味噌ジェラートで、甘塩っぱくて汗をかいた後に最高にしみます。
これも加藤さんの新たな味噌提案のひとつです。

 

 

 

田嶋:味噌蔵を見学したのは初めてだったので、いろいろと勉強になりました。

 三好:山と味噌って親和性高いと思うんですよね。それこそ大昔の旅人は味噌を持って旅をしていたわけですし。

田嶋:液体の醤油より持ち運びしやすいですしね。

加藤さん:そしてこれは意外と知られてないんですが、味噌は腐らないんです。先々代が作った味噌とかがひょっこり出てきたりするんですよ。けっこうひどい環境に置かれていたのに、ぜんぜん食べられますからね。

三好:たしかに10年味噌とかありますもんね。でも要冷蔵になっているのが多いのはなぜなんでしょう?

加藤さん:あれは発酵させないためですね。味が変わるのを防ぐという意味あいです。常温だと味はどんどん変化するけど腐るわけじゃないんですよ。まれに表面が白くなってしまうことはありますが、それも酵母なので体には害はないです。ただ味は良くないので取り除いたほうがいいですね。

田嶋:麹って日本にしかないという話ですが、あれはなぜなんでしょうね? 世界中の人が買いにきますもんね。

加藤さん:謎なんですよ。自然界に放てば育ちそうですけどね。

田嶋:麹も含めて味噌は奥行きとロマンがありますよね。

三好:なにか山に特化した味噌系の食品を作れたりすると良いですよね。

加藤さん:プロテイン味噌みたいなものも考えたことがあるんですよね。

三好:栄養素を気にしている登山者は増えてますしね。クエン酸入りとかもありかも?(笑)

加藤さん:あとは山特化というわけではないんですが、いま共同で進めているのが乾燥味噌です。石鹸みたいな固形で、削ってパルメザンチーズのように使えるんですが、まだ試行錯誤中ですね。不思議なのは乾かすと塩味が少し抜けるんですよね。旨味は強くなっているんで、そのままおつまみとして食べられるんです。

 田嶋:乾かすことによる変化というのはMGL的にもテーマですからね。もしそれが完成したらぜひ試してみたいです。なにかアイデアが生まれるかもしれません。からすみ的な使い方ができたら面白いですよね。

三好:ヤマメシの隠し味で最後に下ろし金でシャシャッとやったら、「なんですか、それ?」ってなりそうですね。

  

締めはお買い物タイム。
加藤兵太郎商店さんはお店も併設していて、オリジナルの味噌をはじめ、さまざまな味噌アイテムを購入することができます。そして嬉しいことにマウンテン グルメ ラボの豚汁ぶっかけ飯の姿も! 登山軸で気になったのは「箱根みそくるみ」。
加藤兵太郎商店さんの味噌でクルミをコーティングしたもので、山での行動食にもピッタリなんでは? とうことで次の山行で試してみたいと思います!

 

本記事は特別に見学対応いただいたもので、通常は見学を対応しておりませんので、ご了承ください。)


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いいちみそ醸造元 加藤兵太郎商店

250-0001 
神奈川県小田原市扇町5-15-6
電話:0465-34-7188
営業時間:1017
定休日:日曜・祭日
※見学対応は行っておりません。

https://iichimiso.com/


 

Text & Photo / Takashi Sakurai

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