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MGLが目指す山ご飯の未来
「山小屋スペシャリテ」構想

先日、穂高岳山荘と涸沢ヒュッテでおこなわれたMGL主導のイベント「山小屋スペシャリテ」。プロデューサー三好とシェフ田嶋が実際に現地に行って、山小屋のスペシャルメニューを振る舞ってきました。この「山小屋スペシャリテ」ですが、単発のイベントだけでは終わりません。プロデューサー三好の胸中には「新しい山ご飯カルチャーを作りたい!」という熱い想いが秘められているんです。


ランドネさんでもご紹介いただいた「山小屋スペシャリテ」ですが、今回はここを深掘りしていきたいと思っています。

三好:きっかけとしては、穂高岳山荘の今田さんに誘ってもらった北アルプスの山小屋オーナーさんたちの集まりですね。最初はただマウンテン グルメ ラボ(MGL)の宣伝ができればうれしいな、という感じだったんですが、せっかくの機会なのにそれじゃあ芸がないなと思って、いろいろ考えた時に思い付いたのが「山小屋スペシャリテ」というアイデアでした。

我々がしたいことっていうのは、突き詰めれば「素晴らしい山というロケーションの中で、美味しいものを食べたら最高だよね」ということです。

だから、自分たちが作ったものを山小屋さんで売ってもらうだけではちょっと自分的に面白みがないなと。それだったら山小屋さんで提供している食自体にアプローチできないかということで思い付いたのが「山小屋スペシャリテ」です。


具体的にはどんなビジョンだったんですか?

三好:MGLが山小屋さんごとにスペシャリテを考案して、それを提供してもらう。それはただ味を変えるだけではなくて、その山域の風土、地形、地質なども感じられるようなものにしたい。

それによって、山好きだけじゃなくて、グルメ文脈の人もわざわざ食べにくるような、そんな食を提供したいと思っています。そうすることで、また違う山の魅力を発信できるのではないか、という思いですね。

 


実際に先日、穂高岳山荘と涸沢ヒュッテで「山小屋スペシャリテ」のイベントを実施しました。このあたりはランドネさんで詳しく取り上げていただいてますが、三好さんとしてはやってみてどうでしたか?

三好:イベントにはたくさんの方が集まってくれたんですが、かなり好評で、うれしい声もたくさんいただきました。

 

今回の「山小屋スペシャリテ」イベントでは、「鶏と舞茸のシェリー煮込み」を提供していましたが、これはレトルトバージョンになっているんですよね?


三好:そうですね。山小屋で提供するのであれば、湯煎するだけで良いレトルトのほうが向いていると思いました。ただ、開発にはけっこう苦労しました。最初の試作品は再現性が低かったんです。そこからたくさんの工場さんを試してみて、シェフと工場さんのほうでいろいろと調整していって、ようやく納得いく味になりました。レトルトのソースなどはMGLでも今後やってみたいことではあるので、とても良い勉強にもなりました。



ちなみにいくらで提供したんですか?

三好:2500円ですね。シェリー煮込みは材料の値段が高いので、これでもかなり頑張った値付けです。


イベントを終えてみて、今後本格的にやっていく上で課題のようなものは見つかりましたか?

三好:メニュー数をどこまで増やせるのか、というところですね。まずは人がたくさん来るような大きい小屋ではじめて、人気が出てきたら徐々に広げていくというのが現実的かもしれません。でも、目標はすべての山小屋で違うメニューが出てくることに変わりはありませんので、レトルトのコストダウンなど今後も努力を続けていきたいです。


たとえば、最初のうちはシーズンごとに山域を変えて展開していくとかも良いかもしれませんね。

三好:そうですね。八ヶ岳の小屋の方ともちょっとそういう話をしたいなと思っていて、こんどご挨拶に行きたいなと思っています。あと、いまちょっと考えているのはMGL単体でやらなくても良いんじゃないかというところです。山での最高の食体験を作る、というのが目的なので、いろんな山ご飯ブランドさんとかを巻き込んで協会のようなものを作ったりしても面白いんじゃないかとか、本当にいろんな可能性を探っています。


なるほど。最後に、三好さんが考える「山小屋スペシャリテ」の理想の未来ってどんなものなんですか?

三好:山小屋ごとに、すごく美味しい料理があって、それを縦走しながら食べ歩いている人がたくさんいて、そこにはもちろん登山目的の人もいますが、なかには究極のグルメを求めて来るような人もいたり。なんだったら山小屋ごとにシェフをアサインして、シェフそれぞれが考える、その山に合う料理を提供してもらったりするのも面白そうですよね。食の百名山じゃないですけど「あそこの小屋のスペシャリテ、まだ食べてないよね」という風に、山に行く動機になれたら最高ですね。商品を売る、というよりもそういうカルチャーを作りたいという気持ちが強いです。

 

Interview by Takashi Sakurai
Photo by Misa Shimazu


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