インタビュー

MGL in the WORLD #02
南米チリのビッグウォールに挑む

マウンテン グルメ ラボがサポートするさまざまな挑戦者を紹介する当連載。今回は、MGLスタッフであるテツとともに若手登山チーム「山菜採りオンライン」に所属している河内晧亮さん。南米のヨセミテとも言われる、コチャモにある巨大岩壁El Monstruoを見事未踏ルートから登頂。山中5週間という旅の先に見えたものとは。

今回はどちらに遠征に?

河内さん(以下、河内。敬称略):チリです。北部パタゴニアのコチャモという場所でクライミングをしてきました。日本ではあまり知られていないんですが、世界的にみると、いま注目を集めている場所です。南米のヨセミテと呼ばれていたりもするんですが、入れる人の数を制限していたり、環境に対する意識も高い場所です。


なんでコチャモだったのでしょう?

河内:僻地でビッグウォールをやってみたかったというのが大きいです。ただ、まったく情報がない場所に行って、結局なにもできないのは嫌だったので、ある程度情報があって、かつまだ開拓の余地がある場所ということで、コチャモに決めました。


なんで僻地が良かったんですか?

河内:ヨセミテなどでビッグウォールをやっていると、下に人がいるんです。クルマも。それを見ると一気に興ざめしてしまう感覚があって。人がいない、隔絶された環境でやりたいという思いは強いです。そのほうが壁に対してフォーカスできるというか。あとはビッグウォールになると登っている途中に、壁に張り付いたまま泊まったりするんですが、そういうときに人工の光が見えないほうが好みなんです。


人が居ることによる安心感はあるのでは?

河内:安心感もあるんですけど、僕の場合は逆ですね。そういうリスクも含めてクライミングだと思っているところがあって、いつでも救助を呼べる状態というのはあまり望ましいことではないです。簡単な内容でも良いから自分自身の力でリスクを克服していくことにクライミングの醍醐味を感じます。

今回はどんな壁に挑戦したんですか?

河内:コチャモの中でも1番デカいEl Monstruoです。日本語訳すると怪物という意味なんですが、1000m以上あります。そこに「物怪(もののけ)」という新しいルートを拓くことができました。


どんなルートなんですか?

河内:ちゃんとやってる人からしたら、難易度的にはそこまで難しいものではないと思います。でも、自分たちでビッグウォールを開拓したという経験は大きかったです。


開拓っていうことは、当たり前ですが誰もそこは行ったことがないわけですもんね?

河内:そうですね。例えばヨセミテとかの既存のルートだと、本を見れば次にどんなセクションが来るのかわかるんですが、開拓だと当然そういう情報はないわけです。でも、それこそが面白さだと思っていて「こんなに美しいクラックが出てきたか」とか、驚きの連続です。次になにが出てくるかわからない、それが開拓のなによりの魅力だと思います。

 

 

ちなみに何日かかったんですか?

河内:山中で5週間野宿しましたが、クライミング自体は4日間です。幸せな時間でした。そこには自分たちと山しかない。気持ち良いですよ。


今回のクライミングにおいて大変だったことはありましたか?

河内:ぜんぜん英語も通じないエリアですし、現地に着いてからの準備がとにかく大変でした。あとは歩荷ですね。150kgくらいある荷物をベースキャンプまで2日間かけて荷揚げしないといけなかったのはキツかったですね。それにくわえてアプローチの道がジャングルすぎて、核心はむしろそこでしたね。

そういう苦労を超えて登りきったわけですけど、そういうときって真っ先になにを考えるんですか?

河内:けっこうシンプルで、生きてた〜って感じです。


下りたらコレしよう、とかは?

河内:肉食べようと思ってました。実は持って行った食料が途中で切れてしまって、30時間以上、ご飯食べられなかったんです。それもあって後半はかなり動きが悪くなってしまって。とりあえず、肉と甘い物のことばっかり考えてました。


そんな途中で食べたマウンテン グルメ ラボはどうでした?


河内:実は2人で一食ずつしか持ってきていなくて、ここぞという時に食べようと決めてました。下山予定の前日に、最後の晩餐的な感じでいただきました。


隔絶された壁で食べるマウンテン グルメ ラボはどうでしたか?


河内:「鶏と舞茸のシェリー煮込み」を崖の途中で食べたんですが、思わず声がでるほど美味しかったです。どこで食べても幸せな気分になれるとは思うんですけど、隔絶された壁で食べると段違いだと思います。


今後の目標などは?


河内:山菜採りオンラインとして、行きたい山をいろいろと出し合ってるところです。個人的にはいろんな僻地のビッグウォールに挑戦してみたいです。グリーンランドとか、そのあたりも気になっています。


やはり未知に挑戦したい気持ちが強いんですね。


河内:そうですね。わからないから楽しいんだと思います。そういう未知に個人で挑戦しようとしたら、クライミングが最高の手段なんじゃないかなと。深海とか宇宙は個人では行けないですから。


 

interview by Takashi Sakurai

 

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