山の“食”実験レポート
#01 保温ジャー
“ラボ”と名乗っているからには、いろいろと山の食をめぐる実験的なものにも取り組みたいと思っていまして、今後はこのマガジンを通じて、われわれが得た所見などをお伝えしていけたらと思っています。
今回のテーマは「保温ジャーを使ってマウンテン グルメ ラボは作れるのか?」というもの。正式な作り方としては「沸騰させる」としてあるんですが、ぶっちゃけた話、水から戻すことも理屈上は可能です。ただ、それだと時間がかかりすぎるので現実的ではありませんし、当然冷え冷えです。そこで試してみたのが真空断熱保温ジャーを使った調理方法。
抜群の保温力を誇るジャーに、熱湯とマウンテン グルメ ラボを入れて放置したら、果たして美味しくできあがるのか?
今回、シェフ田嶋が用意したのは〈パタゴニア〉の「ミアー・フード・キャニスター」。カタログデータでは、保温効力は最長6時間(65度以上)。これに熱湯と「鶏と舞茸のシェリー煮込み」を入れて、4時間ほど山の中(気温約3度)を行動してみました。
結果としては、かなりぬるくなってしまっている&食感がブヨブヨに。まあ、食べられないことはないのですが、これは正直言ってオススメできません! 保温ジャーのスペックの問題というよりは、放置していた時間が長すぎたのが失敗の原因だったようです。
一方、ライター櫻井は〈サーモス〉の「真空断熱スープジャー」で参戦。こちらの保温効力も6時間(63度以上)とほぼ同等の数値です。こちらに関しては、食べる40分ほど前に、別の保温ボトルに入れてきた熱湯と「ラムと豆のトマトシチュー(ブルグル入り)」を投入してみたところ……。これはかなり美味しくできました! 米よりもブルグルのほうがこの調理方法には合っていそうですし、時間的にも40分くらいまでがベストなんじゃないかという結果に。
今回試した気温3度ほどの冬山だと、一度沸騰させてから15分間放置するという調理方法をとると、出来上がる頃にはどうしたって冷めてしまいます。そこから再加熱すれば問題はないのですが、焦げ付きの心配などもあります。そういう理由から今回はこの実験をしてみたのですが、メリット、デメリットをまとめると以下の通り。
■メリット
・保温ジャーだけで完結できるので、バーナー、クッカー、ガス缶などが必要なくなりUL化ができる。
・行動中にお湯を入れてバックパック内で放置することができるので、結果的に時短になる。
・強風時などゆっくり調理することが困難な場合でもなんとかなる。
・保温ジャーに入れておけば、一気に全部食べきらなくてもOK。
■デメリット
・冬だと冷めてしまうし、逆に夏だと食材が傷まないかという心配がある。
・長時間、お湯に浸してしまうと食感などが失われてしまう。
・沸騰させて作る正規の調理方法のほうがやっぱり美味しい!
一見すると、メリットのほうが多い感じになっていますが、マウンテン グルメ ラボが大切にしているのは、なんと言っても美味しく食べること! ということで、やはり正規の作り方で調理していただくのが嬉しいなぁという結果でした。
くわえて、荷物が増えても構わない! ということならば「正規の作り方で沸騰させた上で、保温ジャーに移し替えて蒸らす!」これが、寒い冬山でも熱々を食べ続けられる最強パターンかもしれません。
Text/Takashi Sakurai
Photo/Hinano Kimoto