インタビュー
山行

低山トラベラー・大内征さんと飯能周辺の低山歩きへ

集合場所の飯能駅の改札から、いかにも登っていそうなシルエットの人物が出てきました。

今回マウンテン グルメ ラボのメンバーと一緒に登ってくれるのは低山トラベラーとして、各種メディアや講演、ツアーなどで引っ張りだこの大内 征さんです。「低山トラベル」などの著書もあり、まさに低山マスター。これまでに登った山はなんと1000座を軽く超えるというスゴイ人。

そんな征さんに、低山の魅力を学ぶというなんとも贅沢な企画です。

MGLメンバーは食いしん坊担当の三好と、先月から新たに仲間入りしたガチクライマー枠の営業・テツ、そしてライター櫻井という布陣。



全国の低山を歩いている征さんのホームマウンテンであるという飯能周辺。まずは駅から歩いて吾妻峡という場所に向かいます。すぐに山ではなくまず川に行くあたりが、すでに通常の低山ハイクとは違っています。

駅から徒歩圏内なのに、驚くほど綺麗な渓流が流れています。征さんは、このあたりに月に2〜3回来るそうです。

「なんど来ても感動があるんですよね。四季折々の変化も楽しいですし」

登山を初めたてだと、どうしても次々に違う山を制覇していきたい気持ちが強いものですが、征さんくらい様々な山に登っていると、自分の好みの山というものが明確になってくるようです。


「もちろん、高標高の山も良く行きますし、チャレンジングな登山も好きなんですけどね。それとは別にこうしたホームマウンテンを持っていると、心身のチューニングができる感じがあります。」


しばらく渓流沿いを進んで行くと、川を横切るように飛び石のようなものがあります。これはドレミファ橋。マンガ「山のススメ」でも登場した場所です。

「ちょっと、僕の秘密のスポットに行ってみます?」という征さんに促され、もう少し奥に進むと、人の気配がなくなります。新緑が美しく、巨岩が鎮座した神秘的な場所。

「川の中に折り畳み椅子を置いて、チェアリングをやりにくることもあるんですよ。夏場だったらこの付近の山から下りてきたら、ここで水浴びして日帰り入浴に行って、タップルームで締める、なんてこともよくやってます」

まだ山に登っていないのに、すでに充実感があります。このままここでビールを飲んで帰っちゃっても良いかも。


征さんに「プレミアムにごり梅酢」を試してもらいながら、のんびりと休憩を挟んだ後にいよいよ登山口へ。

この日登ったのは柏木山。
気持ちの良い草原が広がる登山口から、樹林帯の中をのんびりと登って行きます。途中には飯能のジャンダルムと呼ばれる場所があり、なにやら看板の上に6本の竹筒が設置されています。それぞれの竹筒の下には武甲山や棒ノ嶺などの山名。覗き込むとその山がピンポイントで見られるという、アイデア看板。

「地元の人が作ってくれたんでしょうね。こういう地元の人が何回も登っているような山は間違いないんですよ」


さらにしばらく登ると、バーンと景色が開けます。

「今日はあたりですね。丹沢、奥多摩、都心までぜんぶ見えてます」

遠くには富士山の姿も。わずか標高300mとは思えない景色の広がりに、一同足を止めて撮影タイム。そういえば、征さんは歩く速度自体は速いし間違いなく健脚なんですが、頻繁にカメラを取り出して撮影したり、道端に咲くお花に目を向けたりしています。

「ソロ低山の時は、1分の足休め程度の休憩をたくさんとりますね。たとえば60分を休憩に割り当てるコース計画なら、60回になる。疲れる前に足休めして、心身を整えながら歩くんです。そうやって、ちょっと足を止める回数を増やすだけで、小さな魅力にたくさん気付くことができますしね。低山の良い所って、短い距離をゆっくり行くこともできるし、繋いでしまえばかなり長めの距離設定もできるところだと思います。だから体調とか気分で自分なりにアレンジがしやすいんです」

そして今回の目的地である柏木山に到着。いかにも手作りな味のあるベンチやテーブルが設置されています。たしかに地元愛され山。ありがたく使わせてもらうことにしてマウンテングルメの開始です。


今回用意したのは「烏賊塩辛のクリームペンネ」。ちょうどロットが切り替わるタイミングだったので、ロットごとに味が落ちたりしていないかのチェックも兼ねています。そしてもうひとつが今夏発売を目指している「MGLクイックシリーズ」の試作品で、お湯を入れてかき混ぜるだけで出来上がるポテトピュレ。

「ひととおり食べさせてもらったんですが、どれも手間ひまかかっているメニューばかりですよね。新規参入ですし、大変だったと思います。どうしてはじめたんですか?」

「山って、グルメを堪能するのに最高のコンディションだと思ったんです。こんなに良い景色で、食べるものも美味しかったら、人生ベスト飯になる可能性を秘めているんじゃないかって」

「なるほど。よく言う“山で食べたらなんでも美味い”のさらに上を行ったんですね。景色って人の少なさも大事だと思うんです。低山だとさっき行った吾妻峡みたいに、良い場所なのに全然人が来ない場所も多い。自分だけのマウンテングルメスポットを探すのにも向いているかもしれません」

マウンテングルメをしっかりと堪能した後は、のんびりと里山を歩いて飯能市街まで戻って来ました。スマートウォッチによれば歩いた距離は10km以上で消費カロリーは900超え。ということで、躊躇なくグルメ延長戦として街中華へと突入します。

「いつもはCARVAAN BREWERY & RESTAURANTという高級店がやっているタップルームに行くんです。そっちだとカジュアルな感じなので、山帰りでも寄れちゃうんですよ。でも今日は残念ながら休みみたいで」


つ、次はそっちのフルコースもお願いします!



■プロフィール
低山トラベラー
大内征(おおうち・せい)

1972年生まれ、宮城県出身。山里の歴史文化を辿り、ローカルハイクと低山ワールドの魅力を探究。日本中の低山に精通する第一人者として精力的に活動中。高所登山やピークハントだけではない“知的好奇心をくすぐる身近な山旅”の喜びを、文筆・写真・講演などで伝えている。2016年にスタートしたNHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」のほか、石丸謙二郎の山カフェでは「いざ、歴史の山へ」にレギュラー出演中。NHKBS「にっぽん百名山」等の山番組では案内人として、メディアやプロジェクトには監修やコメンテーターとして関わっている。著書に『低山トラベル』(二見書房)シリーズ、共著に『手書き地図のつくり方』(学芸出版社)など。2025年6月には新著『低山からはじめるソロハイク超入門』を山と溪谷社より発表予定。熊野古道・サンティアゴの道 共通巡礼アンバサダー。NPO法人日本トレッキング協会常任理事。手書き地図推進委員会研究員。

instagram:@sei_ouchi/



TEXT / Takashi Sakurai

Related products

View more