
グルメ・ハイカーズ
#05 大内 征さん
(低山トラベラー)
マウンテン グルメ ラボの愛用者(=グルメハイカー)を紹介していく当連載。今回は、低山トラベラーの大内征さん。低山をテーマにしたラジオや講演、文筆業など多岐にわたって活躍中です。低山関連の著書も多く、最近では「低山からはじめるソロハイク超入門(山と溪谷社)」を上梓しています。そんな低山マスターに、マウンテン グルメ ラボの感想などを伺いました。
最初に現在の活動内容を教えていただけますか?
低山トラベラーと名乗って、日本中の低山を旅しています。高い山はほどほどに、里や山の周辺にある歴史、神話、文化などが好きなので、それらが色濃く残る低山に自然と足が向いている感じです。そこで感じた魅力などを多くの人に伝えたいと思って、脱サラしました(笑)。いまは文章や講演、ラジオなどを中心に発信しています。
NHKラジオ深夜便「旅の達人〜低い山を目指せ!」ですね。10年前にスタートということですが、切り口が新鮮でした。
きっかけは実は東北の震災なんです。当時、僕は会社員をしながら、故郷宮城で復興支援の活動もしていました。通常の復興支援とは毛色が違って、宮城のことをもっと知ってもらうということにフォーカスしました。多くて20人ほどのゲストを招いて、2泊3日でベースキャンプにテント泊しながらフィールドワークするというものなんですが、どこを見てもらうべきか、そこでなにを感じてもらうか、そういうプランニングから実地のガイドまでやってましたね。地元の人と触れ合ってもらったり、塩害で使わない田んぼにテントを張って拠点にしたり。震災後のリアルを知ってもらうための僕なりのアプローチでした。それがすごく評判になって、NHK仙台放送局に取材してもらったんです。そうした繋がりから、ラジオ番組のご縁をいただきました。
すごい数の山に行っていると思うんですが、よく行くホームマウンテンは?
飯能近辺の低山です。もう目をつぶっても歩けるくらい、歩きこんでます。心身をチューニングするのにもちょうど良いし、ちょっとトレーニングっぽくしたければ、装備を重くしたり、いろんな山を組み合わせて長く歩くこともできる。その時の状況などによって、いろんな歩き方ができるところが良いですね。
登山のスタイルはどんな感じですか?
ハイテクすぎる感じよりはじゃっかん野暮ったいほうが好きですね。若い頃に古着屋でバイトしていた影響もあるのかもしれません。いま自分の中でコットンブームが来てるんです。コットン100%はさすがに山に着て行きませんが、30%程度でもコットンが入っているとやはり風合いが良い。下山後はそういうTシャツに着替えたりします。経年変化も楽しいですしね。
登山におけるこだわりのようなものはありますか?
テーマを大切にします。なぜその山に行くのか、というところですね。僕の場合は歴史や神話・民話絡みのテーマが多いので、その痕跡が色濃く残る低山に行くことが多いんです。「確かめたい」という気持ちが強いので、ある種答え合わせのような側面も持っています。書物などで得た知識を自分の身体で確認していく。ピークハンターではなく、フィールドワーカーなんです。
いま、いちばん登りたい山はどこですか?
山というか、カミーノ・デ・サンティアゴ(サンティアゴ巡礼路)を歩きたいですね。ここも僕が好きな山に紐付いた文化がたくさん残されている場所です。アンバサダーをしていて、公私ともにしょっちゅう行っている熊野古道とも姉妹トレイルなんですよ。カタルーニャのほうは旅したことがあるんですが、カミーノ・デ・サンティアゴはまだ歩いていなくて。日数がかかるんで、どこでその時間を作るかが鍵ですね。
山ではどんな食事をしていますか?
デイハイクのときは行動食で済ませることが多いです。地元の銘菓を探すのも趣味なので、行った山の近くで昔から愛されているお菓子を買って、山で食べるのが好きなんです。テン泊の場合もかなりシンプルです。お湯で戻せたり、温めるだけで完成するようなものが多いです。だから、こういうマウンテン グルメ ラボのような存在はとてもありがたいですね。
マウンテングルメラボを食べてみての率直な感想を教えてください。
このクオリティのものが山で食べられるのか、の一言です。しかも、これまで食べていたものと同じくらいの手間で完成してしまう。味はもちろんなんですが、量もちょうど良いですよね。
マウンテングルメラボでは、どの味が好きですか?
スパイシーなものが好きなので、「香ばし海老のレモン麻婆飯」ですね。麻婆という言葉からくるイメージを見事に覆してくれる意外性も楽しい。自分じゃ絶対に作れない味です。
こういう味が欲しい、ここがこうだったら、などマウンテングルメラボに要望があったら教えてください。
甘い系のデザートが欲しいですね。和菓子が好きなので、おはぎを山に持って行くこともあるんです。そういうおはぎっぽいものとかどうでしょう? もうひとつはココナッツミルクとお米のスイーツ。ライスプディングみたいなイメージです。長いテン泊とかをやると、どうしても食事がしょっぱい方に振り切れていってしまうんですよね。そんな中で、美味しいスイーツが入って来たら、すごく豊かになると思うんです。
「山は最高のレストランだ」がMGLのテーマでもあるんですが、数多くの低山を歩いてきた大内さんとして、おすすめの山飯ロケーションはどこですか?
ひとつは、以前、一緒に行った飯能の柏木山ですね。あとは北海道の礼文島。そこの海岸線にあるトレイルが最高に気持ち良いです。お花の時期が本当に美しくて、この世じゃないみたいなロケーションです。名付けて「地の果てのレストラン」。なんだか響きも格好良くないですか。それからみちのく潮風トレイルの一部でもある青森の種差海岸。ここは一面芝生が広がっていて、地べたに座っていつまででものんびりできます。六甲山の市ヶ原も良いですよ。山の中にある綺麗な河原なんですが、なんと新神戸駅から歩いて1時間ほどというアクセスの良さ。最初に行ったときに、そこで本格的なバーベキューをやっている人がたくさんいることに驚きました。その人たちに話聞くと、ご飯を食べるために山に来てるっていうんです。そういうスタイルも素敵だなあと思います。
最後に、今後どういう活動をしていきたいかなど、展望があれば教えてください。
いま、写真だったり調べ物だったり含め、しっかり資料として揃えられている低山が1000座ちょっとなんですが、その数をもっと増やしたいですね。あと3、4年続ければ2000座くらいは行くと思うので、とりあえずそこをしっかりやる、ですね。低山といえば大内という、そんな自分なりの土俵を作りたいですね。
interview by Takashi Sakurai